ハードボイルド/ハードラック

2008年11月18日 13:47

ハードボイルド/ハードラック (幻冬舎文庫)ハードボイルド/ハードラック (幻冬舎文庫)
(2001/08)
吉本 ばなな

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ばなな読み始めの一作。

短編2編、
一個めはひょんななことで昔の恋人を思い出すちょっと奇怪めいた話

2個目は徐々に死にいく姉との思い出を思い出しつつも、淡々と明日に向かっていこうとする女子大生と変わった男の話。

タイトル、そしてカバーの特殊さとは逆説的に内容はかなり中庸な感じ。

時間つぶしに読むのに良い、くらいのものですね。

まあジェケ買いしてみるのも一興。

狐火の家

2008年09月21日 19:47

狐火の家狐火の家
(2008/03)
貴志 祐介

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本書は全部で4つの物語からなっており、4つはそれぞれ独立しているが、その物語たちをつなぎ合わせるキーワードが「密室殺人」と「元(現)泥棒のセキュリティー屋の店長と美人弁護士」だ。

素性を明かせば、本書は著者が前に書いた「硝子のハンマー」という作品の続編に位置するわけだが、事件自体に前作との関連は徳にないので初めて見る人は気を遣わなくてもよい。
物語の構成としては、

事件発生

密室殺人だということが明らかになる

謎を解く

というシンプルな流れがあるので、この構成の流れにどっぷりつかってしまえばこれほど読みやすいミステリーもないだろう。

逆に言えば、それが本書の限界であり著者の限界でもある気がする。
表題作である一作目に関して言えば、途中までは事件が魍魎の仕業である可能性を残しつつ慎重に話が進んでいたのだが(つまりは読者にどんな話かということを期待させる選択の余地を与えているということ)、キーパーソンの登場で「なんだ、ただの殺人か……」というあっけない幕切れを誘発してしまっているのだ。

貴志祐介という作家は確かにミステリー作家であるが、他と彼を隔てるものは彼の創るストーリーが放つ一種の妖怪じみた不気味さであると思う。
ありそうな可能性をすべて登場人物に代弁させて、一番ありえない選択肢を最後に残し、それが正解であったことを無理やり読者に信じ込ませるという鬼畜さが彼のウリのはずだ。

よって、こんな同人誌じみたことを書いたところで読者が満足するはずはなかろう。というか、誰も貴方にこの程度のミステリーを期待してはいないのですよ先生!

スプートニクの恋人

2008年09月01日 12:52

スプートニクの恋人 (講談社文庫)スプートニクの恋人 (講談社文庫)
(2001/04)
村上 春樹

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ハルキシリーズ第三作目。
本屋で立ち読みして、開始の数行にやられてじっくり読もうと思った作品。

語りは一人称であり、自分の友人のことをひたすら語っている。

ハルキの作品に出てくる主人公って特定の異性にはもてるけど、どこかヌケていて憎めないやつが多い。
それは本当に想っている人とはそういう関係にはなれない運命みたいなものを背負っているようであるからでもある。

〜奇妙な恋の物語〜
とい副題が意味を成してくるのは物語の後半。

くどいほどに描かれている人物描写の前半部は、後半の破天荒なストーリをフィクスさせるためだけにあるようなものだろう。

最初の数行のような人を惹きつける人物設定は、展開部の奇妙さを現実の事柄であるかのようにインプットするための作戦だ。

星3つとしたのは、長いフリのわりにオチの方向性がいまいちはっきりしてなくて投げやりだったから。

「考えさせる」とい意味で言えば、なかなか興味深い作品であるのだが、軽い作品を読もうと思ってこの作品を手に取った人には静かにゆっくりと元の本棚に戻した方がいいのかもしれない。

海辺のカフカ

2008年08月22日 14:06

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)海辺のカフカ (上) (新潮文庫)
(2005/02/28)
村上 春樹

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本書はインターナショナルに翻訳され、さらにはかなりの評価を世界的に受けている。

実は、ハルキーな人に対しての偏見のせいで、村上春樹の作品を読むことは今まで一度もなかった。つまりはこれが春樹デビューの本となったわけだ。

本編は主人公が15歳の誕生日の日に家出をする、というところから始まる。一見ただの不良少年の話かな?って思うのだが(事実、親の金を黙って勝手に持ち出したり、ついでに高価な腕時計を持っていこうとするところは不良少年そのもの)様々な人物、事件がファンクションとして働き、歯車となって少年の物語をより大きく、物語的にしていく。

正直、主人公の15歳の「カフカ」について共感するところは少なく、なぜならば彼の考え方があまりに非現実的で、青臭くて、象徴的で、詩的すぎるから。その不完全ともいえる思想を、周りの人物との会話がより哲学的なものにしている。

人物描写がすごくナチュラルで、まるでキャバスに油絵をやる要領で絵の具を足していくかのよう。読んでいてすごく気持ちが落ち着く。どんな残酷な場所でも、その場には一定量以上の冷静が残されている。だから、動悸を感じずに非日常的な感覚にどっぷり浸かっていられるのだろう。

テーマは「記憶の大切さ」「死と対等な永遠の時間」「予言」「因果法則の否定」時々SFを読んでいるような錯覚に陥るが、全編を通して言えば、SFとして読むにはあまりに未熟で、小説として読むにはあまりに非現実的すぎる。

でも、これはもはやバランスを考えて読むようなものではない。

一種の麻薬のようなもの。

これを読んでしまったら、今まで自分の読んできたものを否定したくなる気になる。そのあとに激しくこの村上春樹という作家に嫉妬することになるだろう。

周りの意見に流されるな。
レビューにだまされるな。
ある程度、心の準備をしてとりかかるくらいがちょうどいい。

大地

2008年08月22日 13:35

大地 (1) (岩波文庫)大地 (1) (岩波文庫)
(1997/02)
パール・バック小野寺 健

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大地シリーズ第一巻。

著者の中国に対する見識についての批評はいろいろあるが、このシリーズの最も凄まじいのは、物語の歴史的な背景でもなければ、土着性の強い古風な農家的な思想でもない気がする。本を読むまでもなく、一人の男から始まる、孫までの3世代間の描写がこれほど細かくされた作品はほかにあるだろうか。

いや、そもそも多くの小説では、ある一人のある期間に起きた些細な出来事を大きく広げようとする傾向がある。それは一つの事柄を深く追求し、そこから真理を得ようとするところに意味がある、ということから正しい探求なのだが、しかし、希少価値から言っても、この「大地」という作品はそれらとは違うものであることは一目瞭然である。この作品は長い。そして過去の、しかも思想的に中国という、日本とは近いようで似ても似つかない場所で繰り広げられる一種の群青劇である。だから、読んでいて納得のいかないことや、違和感を感じるところも多々ある。

だがしかし、この作品を一番読んだ方がいいのはより若い人たちであるように思う。若いということは、それだけで、外の世界に目を向けたがり、自分のいる世界を否定する傾向がある。だがこの作品では、結果的にそのことを否定してはいないが、この若い人に特有な妄想じみた幻想をいい意味で諭してくれる。僕も諭されたものの一人だ。

余談だが、個人的に訳書というのは日本語が読みにくいイメージがあるのだが、この本はそれにはあてはまらない。とても読みやすかった。


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